読了時間の目安:
約8分
苫小牧飼料株式会社
(北海道苫小牧市)
澤田さん 苫小牧飼料株式会社は1993年(平成5年)設立。北海道全域において、飼料の製造・加工を主な事業としている。
社員数は28名(2024年8月現在)。
今回は、総務経理部 課長代理の澤田敬輔さんからお話を伺った。
健康に関する有用な情報を様々なつながりから集め、社内サイトや安全衛生委員会といった方法で、定期的に情報発信を行うことにより、社員のヘルスリテラシーの向上につながっている
まず、健康経営の取組みについて、お話を伺った。
健康経営に取り組むことが当たり前な会社を目指しています 「2021年の年始挨拶で、私が『今年は健康の年にするぞ!』と言ったところから、健康経営の取り組みは始まりました。私自身が、禁煙してから健康の大切さに気づいたので、それを他の社員にも共有したいという想いから発した言葉でした。」
「まずは、分煙などの禁煙対策から取り組みました。その後、インターネットを通じて“健康経営優良法人認定制度” について知り、社員の健康に組織的に取り組むにはこの制度を活用することが適していると考え、健康経営を目標に掲げました。社長にも賛同いただき、当社が30周年を迎える2023年を“健康元年”と位置づけ、健康経営をするのが当たり前な会社づくりを目指すことにしました。」
健康に関する情報を社内のポータルサイトに掲載して情報共有しています 「健康に関する情報を、社内のポータルサイトに随時掲載しています。例えば、当社は100%出資の親会社の傘下にあるのですが、親会社に所属している保健師がまとめた“保健師コラム”を毎月掲載し、社員に周知しています。その他、健康経営優良法人として認定を受けたことで、近隣のフィットネスクラブの割引特典が利用できるようになったので、そうした情報も掲載しています。」
「また、私が理事を務めている、地域の“社会保険委員会”に協会けんぽの方がいるので、健康経営の取組みについて相談して助言をもらうこともあります。例えば、女性社員が抱える健康の悩みについて相談したら、厚生労働省のサイト“ヘルスケアラボ”を教えてもらったので、社員に周知しました。」
「サイトの情報更新は総務経理部で行っていますので、外注などの経費は必要ありません。人とのつながりで得られる情報も大事にしています。小さな会社ですので、お金をかけなくてもすぐにできる取組みを積み重ねることを大事にしています。」
安全衛生委員会の中でメンタルヘルス対策を含む健康経営の勉強会を実施しています 「毎月実施している安全衛生委員会の中では、先の“保健師コラム”などを参考に、メンタルヘルス対策を含む健康経営に関する勉強会を行っています。委員会へ出席できなかった社員に対しては、各部門のリーダーが個別に教育するなどして、ヘルスリテラシーの向上に努めています。」
業務の段取りを見直し集中していた時間を分散させることで時間外労働が減りました 「また、所属する経理部門は、四半期決算のため、3か月に1回は必ず時間外労働が増える時期があります。その段取りを見直して、3か月に1回にまとめて行う作業を、10日に1回ずつ行うよう業務を分散させました。その結果、部門全体で時間外労働時間を削減することができました。業務の段取りを見直すことはISO認証の取得や維持をする過程で実施していることを横展開させた取組みです。社員にもこの考え方が浸透してきていると実感しています。」
“健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)ブライト500”の認定を受けました 「今年は“健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)ブライト500”の認定を受けました。最近では、同じ親会社からの縁で、青森や鹿児島などにあるグループ会社からも健康経営について相談したいという依頼が来るようになり、私が直接出向いて、3日ほどかけて体制づくりや実施方法についてレクチャーしています。当社だけではなく関連会社にも健康経営の大切さを伝えていきたいと考えています。」
ゲートキーパー養成講座や両立支援コーディネーター基礎研修などを通じて職場のメンタルヘルスに関する知識やスキルを習得し、社内に展開している。
続いて、メンタルヘルス対策全般についてお話を伺った。
メンタルヘルス対策として学んだ話の聴き方が管理職の部下とのコミュニケーションに役立っています 「これまで、精神疾患を理由に休んだり辞めたりする社員はいなかったため、健康経営に取り組み始めるまではメンタルヘルス対策を積極的には行っていませんでした。メンタルヘルス対策として最初に取り組んだのは、苫小牧市の“ゲートキーパー養成講座”の受講です。自殺予防対策の講座でしたが、話の聴き方や日頃からの社員へのケアの方法について学ぶことができました。講座で教わったことを私が社内で実践し、社員が話しやすい雰囲気づくりを意識したり、心の中のモヤモヤなど溜まっているものを出してもらうようにしたりしています。話を聴く中では、まず最初に褒めるということを意識しています。そして、話を聴く中で対応が必要なことがあればすぐ対処しています。最近は、このような話し方を他の管理職も真似しはじめており、部下とのコミュニケーションに役立っているようです。」
地さんぽの産業医や協会けんぽの保健師など外部支援機関を活用しています 「当社には選任の産業医はいませんが、外部支援機関として、地さんぽ(地域産業保健センター)の産業医と協会けんぽの保健師に協力をお願いしています。いずれも無料でメンタルヘルスを含む健康に関する相談にのってもらえるので、ありがたいです。地さんぽの産業医には、健康診断後の有所見者の面接指導を依頼しています。また、協会けんぽの保健師は長年同じ方が担当してくださっているので、経年変化を踏まえた保健指導をしていただくことができています。」
いつか必要になる時のために両立支援について学びました 「また、私は“両立支援コーディネーター”も務めています。今はまだ支援が必要な状況の社員はいませんが、今後、必要となった時は、基礎研修で学んだことを踏まえて対応したいと考えています。健康に不安がありながらも健康相談や受診に抵抗を感じる社員に対しては、『受診後、病気だと分かったとしても、私が両立支援コーディネーターとして支援するから大丈夫。早めに治療することが大事』と伝えて、受診を促しています。」
健康診断機関の仕組みを活用したことで、小規模事業場でもストレスチェック制度に基づく実施が継続できている
最後に、ストレスチェックの取組みについてお話を伺った。
毎年依頼している健康診断機関に相談してストレスチェックを始めました 「2022年に初めてストレスチェックを実施しました。実施にあたっては、毎年依頼している健康診断機関が提供しているストレスチェックのサービスを利用することにしました。ストレスチェックを導入する目的や意義については、社内サイトを通じて社員に広く周知するとともに、安全衛生委員会でも説明しました。」
「1ヶ月の実施期間を設けて、WEBや紙で回答してもらっています。社員の多くは興味を持って受けていました。皆、自分のストレスの状況について関心があるようです。高ストレスで医師による面接指導が必要な社員に対しては、健康診断機関のストレスチェック実施者から本人に結果を通知した上で、健康診断機関の医師による面接指導を行いました。医師の意見書を基に、本人と私が面談をし、社長と相談の上、勤務体系を変えたこともあります。すぐに実行することで、社員が安心を実感できることが大事だと考えています。」
「当社の健康経営の指標として“健康経営KPI”を定めています。その項目の1つが“ストレスチェック受検率”です。2022年度は91.6%でしたが、2023年度は100%と全員が受検しました。健康に働き続ける上で、自分のストレス状態について知ることが重要だという会社のメッセージが、着実に社員へ伝わっているのではないかと思います。」
【取材協力】苫小牧飼料株式会社
(2024年11月掲載)